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廃線・廃止になった鉄路
工業都市"茂原"と三井東圧化学専用線のすべて (1)
三井東圧化学専用線が存在した工業都市「千葉県茂原市」

茂原公園より、市内中心部を望む
(画像提供:写真AC)

房総半島の中核都市、「茂原市」の概要

三井東圧化学専用線が存在した千葉県茂原市 (もばら) は房総半島の外房地区中央東部に位置する都市で、長生地域 (茂原市と長生郡の一宮町、長南町、長柄町、睦沢町、白子町、長生村) の中心都市となっており、北部は千葉市緑区や大網白里市 (旧称は山武郡大網白里町)、西部は市原市・長柄町・長南町、東部は白子町・長生村、南部は睦沢町と隣接しており、全国的にも珍しい計8市町村と接しています。


茂原市には、東京から特急「わかしお」で約1時間でアクセスできる外房線の主要駅である「茂原駅」があり、新茂原駅と本納駅の3つの駅が存在します。茂原駅はかつて、首都圏でも主要な貨物駅の一つでもあり、最盛期には一日平均1,100トン前後の貨物や荷物が取り扱われていました。今回紹介する三井東圧化学専用線 (三井東圧化学千葉工業所、現在の三井化学茂原分工場が所有していた鉄道引込線) などの各専用線の所管駅となっていました。

長生地域の駅一覧

茂原市の南部と北西部は小丘陵地が起伏していますが、一方で茂原駅や三井東圧化学 (現在の三井化学) がある北東部は九十九里平野の南端に位置し、平坦な地形です。中心市街地は国道128号線と県道14号千葉茂原線 (通称は茂原街道) の交差点付近に形成され、ほぼ中央に位置しています。

長生地域・茂原市周辺
外房線 (本納〜茂原〜上総一ノ宮) と並行する国道128号線、長柄方面が県道14号千葉茂原線 (茂原街道)
長南方面が
国道409号線、県道14号線ともに丘陵地を通る国道468号 (圏央道) に接続している
(OpenStreetMap加筆)

自然との共生、夏の風物詩「茂原七夕まつり」が織りなす茂原市

茂原駅の西に位置する「茂原公園」は、1935年 (昭和10年) に設置され、春には約2,850本のソメイヨシノなどが満開に咲き誇り、桜の名所として広く知られています。この公園は公益財団法人「日本さくらの会」が主催する「日本さくら名所100選」」(公式サイト) にも選ばれています。

茂原公園 (弁天湖)
(画像出典:ふるさと茂原のあゆみ)

市の南西部に位置する八幡山の原生林には、絶滅危惧種である「ヒメハルゼミ」(南方系のセミ) が生息しており、「鶴枝ヒメハルゼミ発生地」として知られています。この地は1941年 (昭和16年) 12月13日に国指定天然記念物に指定され、その面積は約15,184u (東京ドーム約3個分) です。

八幡山 (八幡神社の神域)
(出典:Googleマップ)

毎年7月の下旬に茂原駅周辺の商店街地区で行われる、「茂原七夕まつり」は70年近い歴史があり、「関東3大七夕祭り」の一つに数えられ、2015年 (平成27年) の実績では、人口8万9,688人の茂原市において、七夕祭り期間中の3日間に82万人が来場し、県内でも屈指のお祭りとなっています。(茂原七夕まつりの歴史については、ミニコーナー「写真で振り返る「茂原七夕まつり」の歴史や見どころ」で紹介)

茂原七夕まつりの様子
(画像出典:ちば県民だより・一部加工)

天然ガスからの工業都市へと発展した茂原市

また、茂原市は「天然ガス」の一大産地として有名で、「天然ガスの街」としても知られています。外房線茂原駅や付近の沿線から天然ガス事業者である関東天然瓦斯開発 (株) や大多喜ガス (株) が所有する天然ガスタンク (ガスホルダー) を見ることができます。

有水式ガスホルダー (関東天然瓦斯開発所有) 球形ガスホルダー (大多喜ガス所有)
<関東天然瓦斯開発 (株) 本社付近> <阿久川沿い>
(2011年 筆者撮影)

茂原市内や近郊の町村にも、K&Oエナジーグループ各社 (関東天然瓦斯開発・K&Oヨウ素) の天然ガスプラントが点在しています。また、河川や個人の畑などでも川底から湧き上がる天然ガスや畑に設置されたガス井を見ることもできます。

関東天然瓦斯開発 (株) 日当プラント [白子町] K&Oヨウ素 (株) 幸治工場 [白子町]
(画像出典:Googleマップ) (画像出典:Googleマップ)

戦前から戦後にかけてこの天然ガスを燃料や原料に利用するため、大手電機メーカー「(株) 日立製作所」(現在はジャパンディスプレイ) や大手総合化学メーカー「三井東圧化学 (株)」(現在の三井化学) の大規模な工場が進出したことで、一大内陸工業地域へ発展するきっかけとなりました。

(株) 日立製作所 茂原工場 三井東圧化学 (株) 千葉工業所
(画像出典:日立DP会社案内パンフレット) (画像出典:千工三十年史)

三井東圧化学専用線と新茂原貨物駅

三井東圧化学千葉工業所 (現在の三井化学茂原分工場) は、茂原駅または新茂原貨物駅 (正式名称は新茂原駅貨物施設) からの三井東圧化学専用線 (旧称は東洋高圧工業専用線) を所有し、製品や原料の鉄道貨物輸送を1996年 (平成8年) 3月15日まで行っていました。

2001年 (平成13年) 10月 三井東圧化学専用線 (旧ルート / 新ルート)
国土地理院「茂原」(平13) 加筆

茂原市は千葉県内で内陸工業地域として発展し、現在は一大工業都市の一つとなっています。このセクションでは、茂原市の歴史、工業、商業の成り立ちだけでなく、茂原駅と新茂原貨物駅の紹介や、総延長最大9kmに達した三井東圧化学専用線 (旧称は東洋高圧工業専用線) の果たした役割などを20章に分けて詳しく解説しています。さらに、それぞれの章に関連した「ミニコーナー」も設けておりますので、ぜひご覧ください。

1960年 (昭和35年) 千葉県の工場分布図
(参考:全国工場通覧)
青円は、川崎製鉄 (株) 千葉製鉄所 (現在のJFEスチール東日本製鉄所)
赤円は、(株) 日立製作所茂原工場 (現在はジャパンディスプレイ茂原工場)
緑円は、東洋高圧工業 (株) 千葉工業所 (後の三井東圧化学、現在の三井化学茂原分工場)
(※:東京ドーム47,000u・14,217坪で換算)

次章「茂原市の歴史と成り立ちについて」では、茂原市の歴史的な変遷に焦点を当て、地名「茂原」の由来や藻原寺が門前町として発展した経緯、交通の要所として栄えた宿場町であった高師地区、かつて養蚕業の中心地であった「茂原繭市場」、現在も旧市街地で開かれている400年以上にわたる歴史を持つ「六斎市」などを詳しく掘り下げます。そして、時代の変遷に伴い、この地域が「食虫植物の楽園」から「天然ガスの街」へと変貌した経緯について解説いたします。

また、ミニコーナー「茂原の古代伝承と歴史、源頼朝伝説と酒盛塚のマツ」として、鎌倉幕府が開かれる直前にこの地を訪れた源頼朝にまつわる伝説を紹介いたします。


(公開日:2024.01.21/更新日:2024.03.20)

茂原市の歴史と成り立ちについて
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「工業都市"茂原"と三井東圧化学専用線のすべて」目次

三井東圧化学専用線が存在した工業都市「千葉県茂原市」 <このページ>
[ミニコーナー: 写真で振り返る「茂原七夕まつり」の歴史や見どころ]
茂原市の歴史と成り立ちについて
[ミニコーナー: 茂原の古代伝承と歴史、源頼朝伝説と酒盛塚のマツ]
外房線の中核をなす茂原駅と交通ネットワークの発達
"天然ガス"がもたらした茂原市の工業都市化
[ミニコーナー: 茂原飛行場から世界へ、幻の「国際飛行船航路網」計画]
茂原市の人口増加のきっかけとなった、日立製作所と三井東圧化学
[ミニコーナー: 三井東圧化学千葉工業所周辺の社宅と福利厚生施設]
[ミニコーナー: 茂原市の映画館、昭和から平成への変遷]
茂原市の商業地区の発展と変遷について (1)
[ミニコーナー: 「茂原ショッピングプラザアスモ」の概要と歴史について]
茂原市の商業地区の発展と変遷について (2)
[ミニコーナー: 茂原そごう出店の誤算とそごうグループの栄枯盛衰]
工業都市"茂原"を形成する主要企業について (1) [三井東圧化学]
[ミニコーナー: 時代を先駆けた、三井東圧化学の緑化事業プロジェクト]
[ミニコーナー: 三井グループの製薬会社「中滝製薬工業」]
工業都市"茂原"を形成する主要企業について (2) [日立製作所]
[ミニコーナー: 輝く郷土愛、日立DP・茂原アルカスのバレーボールVリーグへの軌跡]
[ミニコーナー: 日立茂原工場の源流、理研コンツェルンが拓いた日本産業の未来]
工業都市"茂原"を形成する主要企業について (3) [関東天然瓦斯開発]
[ミニコーナー: 工業都市・茂原市の現在地、カギを握るJDIの再興と挑戦]

東洋高圧工業の誕生から三井東圧化学に至る系譜
[ミニコーナー: 三井化学の源流、「三井化学工業」の変遷と石油化学分野への展開]
[ミニコーナー: 日本の産業革命の礎となった「三井鉱山」と、鉱工業都市「大牟田」]
[ミニコーナー: 日本初のアンモニア合成に成功した「下関三井化学」の歴史と沿革]
[ミニコーナー: かつて三井・三菱を凌駕した幻の総合商社、鈴木商店]
東洋高圧工業 (三井東圧化学) 千葉工業所の誕生
[ミニコーナー: 「戦後の民間航空発祥の地」となった旧海軍茂原飛行場]
本邦初の石油化学会社誕生と三井グループ化学部門の対立
三井東圧化学を取り巻く、化学業界の情勢
[ミニコーナー: 化学メーカーのグローバル化と苦戦が続く、三井化学]
国内トップシェアの化学肥料メーカー誕生から終焉まで
三井東圧化学千葉工業所 (茂原工場) の黎明期から縮小期まで (1)
[付録: 三井東圧化学千葉工業所で生産された主要製品について]
三井東圧化学千葉工業所 (茂原工場) の黎明期から縮小期まで (2)
[ミニコーナー: 三井東圧化学専用線の三井東圧化学千葉工業所内の構内軌道]
三井東圧化学専用線で行われた、鉄道貨物輸送の歴史
[付録: 三井東圧化学専用線で見られた、入換機関車や貨車について]
[付録: 三井東圧化学 (三井化学) での鉄道貨物輸送について]
配線略図でみる、三井東圧化学専用線の変遷

貨物駅としての外房線「茂原駅」の歩み
[ミニコーナー: 三井東圧化学専用線での通運を担った、南総通運株式会社]
[ミニコーナー: 茂原駅が高架駅となった経緯と駅前再開発]
[ミニコーナー: 蘇る昭和の茂原駅、立ち食いそば店とキヨスクの記憶]
専用線所管駅「茂原駅」と三井東圧化学専用線について
[ミニコーナー: 昭和から令和への鉄道輸送、モーダルシフトと物流の主役への再興]
[付録: 茂原駅で貨物入替作業で活躍した、入替機関車 (スイッチャー)]
三井東圧化学専用線 (茂原駅〜三井東圧化学千葉工業所間) [旧ルート]
三井東圧化学専用線所管駅「新茂原貨物駅」(新茂原駅貨物施設) の歩み
新茂原貨物駅 (新茂原駅貨物施設) の駅施設・荷役設備の紹介
現役時代と廃線後の三井東圧化学専用線 (新線ルート) (1)
現役時代と廃線後の三井東圧化学専用線 (新線ルート) (2)
[おわりに]

[ミニコーナー]
写真で振り返る「茂原七夕まつり」の歴史や見どころ
茂原飛行場から世界へ、幻の「国際飛行船航路網」計画
三井東圧化学千葉工業所周辺の社宅と福利厚生施設
茂原市の映画館、昭和から平成への変遷
茂原市の大型ショッピングセンター、茂原ショッピングプラザアスモ
茂原そごう出店の誤算とそごうグループの栄枯盛衰
時代を先駆けた、三井東圧化学の緑化事業プロジェクト
三井グループの製薬会社「中滝製薬工業」
工業都市・茂原市の現在地、カギを握るJDIの再興と挑戦
三井化学の源流、「三井化学工業」の変遷と石油化学分野への展開
日本の産業革命の礎となった「三井鉱山」と、鉱工業都市「大牟田」
日本初のアンモニア合成に成功した「下関三井化学」の歴史と沿革
かつて三井・三菱を凌駕した幻の総合商社、鈴木商店
化学メーカーのグローバル化と苦戦が続く、三井化学
三井東圧化学専用線の三井東圧化学千葉工業所内の構内軌道
三井東圧化学専用線での通運を担った、南総通運株式会社
茂原駅が高架駅となった経緯と駅前再開発
よみがえる昭和の茂原駅、立ち食いそば店とキヨスクの記憶
昭和から令和への鉄道輸送、モーダルシフトと物流の主役への再興

【付録】工業都市"茂原"を形成した主要企業について [東芝コンポーネンツ]
【付録】工業都市"茂原"を形成した主要企業について [パナソニック (PLD)]
【付録】工業都市"茂原"を形成した主要企業について [同和ジプサム・ボード]
【付録】三井東圧化学千葉工業所 (東洋高圧工業千葉工業所) 略史
【付録】三井東圧化学千葉工業所で生産された主要製品について
【付録】三井東圧化学専用線で見られた、入換機関車や貨車について
【付録】三井東圧化学 (三井化学) での鉄道貨物輸送について
【付録】茂原駅で貨物入替作業で活躍した、入替機関車 (スイッチャー)
【付録】JR東日本・外房線茂原駅 略史

(公開日:2024.01.21/更新日2024.04.16)

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