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廃線・廃止になった鉄路
工業都市"茂原"と三井東圧化学専用線のすべて (24)
新茂原貨物駅 (新茂原駅貨物施設) の駅施設・荷役設備の紹介

新茂原貨物駅の全容について
前節「三井東圧化学専用線所管駅「新茂原貨物駅」(新茂原駅貨物施設) の歩み」では、新茂原貨物駅 (正式名称は、新茂原駅貨物施設) が設置されて経緯や、その歴史について解説しましが、本節では新茂原貨物駅が有していた駅施設や荷役設備について、現役時代の写真や廃線後の様子について紹介いたします。

1983年 (昭和58年) 10月 新茂原駅貨物施設 (新茂原貨物駅) 全景
(国土地理院「茂原」(昭58))

1983年 (昭和58年) 10月 新茂原駅貨物施設 (新茂原貨物駅) 概略図

ご留意いただきたい注意事項
新茂原貨物駅 (新茂原駅貨物施設) の構内への立ち入りは私有地のためできません。今回掲載している写真は、1999年 (平成11年) 11月に所有者であるJR貨物 日本貨物鉄道 (株) 関東支社に事前に電話で趣旨を説明し、書面で許可を得た上で筆者が12月6日に撮影をしています。訪問当日は社員の同行ができないとのことで、貨物駅としては既に廃止されていましたが、十分に安全を留意した上で訪問しました。(現在はコンプライアンスの観点から許可が難しいかもしれません)

また、現役時代の写真については、RED Loco web.様鉄・郵クラブ様、railokachi23様から許可を得てご提供いただいたものを掲載しています。一部の画像に関しては、以下の鉄道前面展望DVD作品「Hi-Vision 列車通り「外房線」特急わかしお」(撮影日: 2005年10月) 及び、「京葉線回り外房線特急 E257系特急わかしお」(撮影日: 2005年2月) からのスクリーンショットを引用しています。

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(東京〜安房鴨川)
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廃駅となった、新茂原貨物駅
1999年 (平成11年) 12月に筆者が新茂原貨物駅 (新茂原駅貨物施設) を訪れた時点では、貨物列車が廃止されてから3年9ヶ月が経過しており、駅が正式に廃止されてからは8ヶ月が経過していました。

新茂原駅貨物施設 (新茂原貨物駅) 概要図
(参考:線路図/東工)

線路は雑草で覆われ、三井東圧化学専用線は既に撤去され、専用線仕訳1〜3のレールも取り外され、バラスト (砕石) だけが残されていました。JR貨物側との境界には、古い枕木を使った車止めが設置されていました。

車止め 榎木町踏切から見た、車止め (2000年)

また、2000年 (平成12年) 11月24日に再訪した際には、貨物ホームの上屋の下に保線用の軌道自動自転車が置かれており、この当時はまだ外房線と接続されていたと推測されます。

軌道自動自転車 (2000年)

(※:RED Loco web.様のホームページ http://www.bekkoame.ne.jp/ha/r28/)

新茂原貨物駅の施設について
1983年 (昭和58年) 10月 新茂原駅貨物施設 (新茂原貨物駅)
(国土地理院「茂原」(昭58)加筆)

新茂原駅貨物施設 (新茂原貨物駅) 配置図

@事務所・構内照明灯
現在、新茂原方と本納方に設置してあった、構内照明灯は2灯とも撤去されています。また、事務所の窓はベニヤで塞がれています。(Googleマップ) 1999年 (平成11年) の訪問時は、本納方の1室はキッチンとなっており、給湯器や小型冷蔵庫が設置されており、簡易的な食事ができたと思われます。

【廃止後】
公道より見た、事務所全景及び、構内照明灯 (※1) 正門付近より、左手が事務所

A構内詰所
また、構内詰所も事務所同様、窓はベニヤで塞がれています。(Googleマップ) 1999年 (平成11年) の訪問時は、外階段のアクリルパネルには「貨物輸送はJR貨物へ 引越しはJRコンテナ」と記載された看板が設置されており、外房線の車内からも見られましたが、現在は撤去されています。

【廃止後】
構内詰所 全景 (※1) 構内詰所 裏側 (※1)
看板 (一部加工) 詰所の出入口

構内詰所は2階建てになっており、1階フロアは輸送事務所、2階フロアは、信号取所・機関士詰所・車掌係詰所となっていました。

【廃止後】
出入口 (貨物ホーム側) 案内板

信号扱所には、鉄道信号システムの一種である「継電連動装置」が設置されていたと思われます。継電連動装置は鉄道で使われる安全装置で、転てつ機 (ポイント) や信号機の操作を連動させ、列車の安全な進行を確保するものです。新茂原貨物駅では、入替標識とポイントを連動させ、貨車の入替時に使用されていたと思われます。

(参考) 第1種継電連動装置
継電連動機
<AI Colorized> (画像出典:鉄道操車場の設計と保線)
継電器戸棚に収められた、リレー架
<AI Colorized> (画像出典信号保安)

廃駅後、貨物ホームの上屋下に廃棄された制御盤が搬出されていたという報告があり、写真から推測するとおそらく継電連動装置を構成する「リレー架」ではないかと思います。

上記の継電連動装置による入替の様子は、いすみ企画様が企画・発売をしている、「物流を担う 日本の貨物列車北海道編 (補訂版)」の別売付録として室蘭本線本輪西駅での入替作業が収録されています。(公式サイト)
[DVD] 物流を担う 日本の貨物列車北海道編 (補訂版)

Bスイッチャー車庫
スイッチャー (貨車移動機、入替動車) 車庫には、貨物機能を茂原駅から新茂原貨物駅に移転した際、茂原駅で使用されていた、国鉄 (JR貨物) 所有の協三工業製のスイッチャーが格納されていたと思われます。(国鉄所有のスイッチャーについては、付録「茂原駅で貨物入替作業で活躍した、入替機関車 (スイッチャー)」で解説)

【廃止後】
公道から見た、スイッチャー車庫 専用線仕訳3番線跡より見る
本納側 新茂原方

C検車庫 (検査ピット)
【廃止後】
本納方より見た、検車庫 (右側は構内詰所)

写真では分かりずいのですが、検車庫にはスイッチャーの床下の検査用に用いられる深い溝 (検査ピット) が設けられていました。

【廃止後】
本納側 新茂原側

D受変電設備
【廃止後】
(※1:2000年11月24日撮影)

新茂原貨物駅の荷役設備や設備について
1983年 (昭和58年) 10月 新茂原駅貨物施設 (新茂原貨物駅)
(国土地理院「茂原」(昭58)加筆)
新茂原駅貨物施設 (新茂原貨物駅) 配置図

@低床貨物ホーム
新茂原貨物駅には、面積が2,230平方メートル (バレーボールコート約17面分※1) のコンテナ荷役に対応した低床貨物ホームがありました。当時使用されていた低床貨物ホームでは、先述の南総通運とともに、三井東圧化学の物流子会社である「(株) エム・ティ・ビー千葉支店茂原営業所」が荷役業務を担当していた可能性があります。(エム・ティ・ビーについては、ミニコーナー「三井東圧化学 (三井化学) での鉄道貨物輸送について」内の「三井東圧化学 (株) の物流子会社の変遷について」で紹介)

【現役時代】
低床貨物ホームより、専用線仕訳2番線で待機するMTD451牽引の貨レ
<AI Colorized> (画像提供:railokachi23様)

また、三井東圧化学所有の入替動車 (MTD451) が停車している隣の専用線仕訳3番線には、バラスト (砕石) 散布用のホッパ車 (国鉄ホキ800形貨車) が見えます。1965年 (昭和40年) から1975年 (昭和50年) の間、三井東圧化学千葉工業所 (茂原工場) では工場内の線路を強化するための工事が行われており、その際に使われたバラストが輸送された可能性があります。(詳細については、前章「三井東圧化学専用線で行われた、鉄道貨物輸送の歴史」の「隆盛を極めた、昭和40年代の三井東圧化学専用線」で解説)

【廃止後】
本納方を見る、貨物ホームの先に構内詰所 右側は検車庫及び、バラスト置場
新茂原方を見る、左から貨物ホーム・積卸線・仕訳線 貨物ホーム上にある上屋 (断面形状)
現在、左側の送電鉄塔は無くなっている 送電鉄塔の右側には、構内照明灯
仕訳線から見た、低床貨物ホームの上屋部分

A積卸線・仕訳線
新茂原貨物駅には、貨物ホームに面した積卸線は1線と仕訳線は3線ありました。

【現役時代】
国鉄所有の協三工業製スイッチャー 三井東圧化学所有の日本車輌製造製スイッチャー
(画像提供:鉄・郵クラブ様)

背後に構内照明塔に見えることから、共に仕訳線3番線での貨車の入替作業の様子だと思われます。隣の仕訳線2番線にはDE10ディーゼル機関車の代打であるDD51ディーゼル機関車の姿が確認でき、専用線仕訳3番線には、車掌車「ヨ8000形」の姿も見えます。

国鉄DD51形ディーゼル機関車 国鉄ヨ8000形車掌車
(画像提供:伊勢崎軌道様)

なお、三井東圧化学所有の各スイッチャーの詳細については、付録「三井東圧化学専用線で見られた、入換機関車や貨車について」で詳しく解説しています。

【廃止後】
本納方を見る、右から積卸線・各仕訳線 新茂原方をみる、左から仕訳線2・1の終端部
後方には、構内照明灯

B三井東圧化学専用線 (仕訳線)
新茂原貨物駅には、三井東圧化学専用線の仕訳線は3線ありました。新茂原貨物駅の廃止後、この3線は直ぐに撤去され、バラストのみ残っています。

【廃止後】
新茂原方を見る (専用線仕訳1番線と2番線) 同じ場所から、本納方を見る

以下の写真は、専用線仕訳2番線では貨車の入替作業中だと思われ、車掌車「ヨ8000形」に三井東圧化学所有のスイッチャー「MTD-253」での連結作業だと思われます。専用線仕訳1番線には濃硫酸用タンク車「タキ29300形貨車」の姿が見えます。

【現役時代】
(画像提供:鉄・郵クラブ

以下の写真は新茂原貨物駅廃止間際と思われ、構内は閑散としています。手前に写る線路が、専用線仕訳1番線〜3番線で、隣の仕訳線1番線にはホルマリン用タンク車 (タム3050形?) ・車掌車 (ヨ8000形)・有蓋車 (ワム80000形) があり、奥の仕訳線1番線にはDE10ディーゼル機関車が停まっています。

【現役時代】
(画像提供:RED Loco web.様)

C引上線
【廃止後】
本納方から見た引上線 、右側の複線は外房線 引上線終端部、JR東日本との境界標
左の枕木の車止めの先は、三井東圧化学仕訳線跡 (鉄骨組タイプの車止め)

D入替標識3 (線路表示式) (信号台2段タイプ)
【廃止後】
新茂原方を見る
【現役時代】
本納方を見る
(画像提供:鉄・郵クラブ様)

1999年 (平成11年) 12月の新茂原貨物駅訪問時には、前述の「継電連動装置」がまだ通電状態にあったと思われ、また、「入替標識3」の線路表示は「−」となっており、開通していないことを示していました。右の写真はAで紹介した写真の右側を拡大したものですが、発着線から駅に近づくDE10形ディーゼル機関車、 もしくはDD51形ディーゼル機関車の姿が見え、、仕訳1番線では貨車の入替を行っており、入替標識3は「4」と「枠13」と表示しており、「13番線から開通した4番線へ移動」という意味となっています。

E入替標識2 (線路表示式) (信号台2段タイプ)
入替標識3には、本納方は2箇所が木材で×となっており、新茂原方は1箇所でした。

【廃止後】
新茂原方を見る 本納方を見る、ここから着発線は300m先まで続く

榎木町踏切
現在、榎木町踏切を通る発着線の2線はアスファルトで埋められ、両側は単管パイプを用いた誤侵入防止の柵 (Googleマップ) が設置されています。

【廃止後】
[前面展望] 新茂原方を見る [前面展望] 本納方を見る
(出典:列車通り「外房線」特急わかしお) (出典:E257系特急わかしお)
(※:2000年11月24日撮影)

新茂原貨物駅の設備について
1983年 (昭和58年) 10月 新茂原貨物駅 着発線終端部
(国土地理院「茂原」(昭58)加筆)
配線略図及び配置図

着発線・場内信号機
現在、新茂原貨物駅の着発線のレールは撤去されずに現存していますが、着発線から外房線 (下り)、外房線 (下り) から外房線 (上り) への2線の渡り線は撤去され、外房線から完全に分離されています。

【現役時代】
発着線1番線を新茂原貨物駅に向かう、DD51-1804牽引の貨レ (榎木町踏切付近)
(画像提供:RED Loco web.様)

下り方向 (新茂原方)
【廃止後の前面展望】
@外房線 (下り) から外房線 (上り) への渡り線 A引上線の終端部
B外房線 (下り) から、着発線1への渡り線 C入替標識1 (線路表示式) (信号台1段タイプ)
(出典:列車通り「外房線」特急わかしお)

上り方向 (本納方)
【現役時代】
発着線を本納方に向かう、DE10-1667牽引の貨レ (第2宮の下踏切付近)
(画像提供:鉄・郵クラブ様)

【廃止後の前面展望】
D出発信号機 (第2宮の下踏切付近) C入替標識1 (線路表示式) (信号台1段タイプ)
B着発線1から外房線 (下り) への渡り線
(右側に速度制限標識45キロ)
@A外房線 (下り) から外房線 (上り) への渡り線
(右側に速度制限標識45キロ、引上線の終端部)
(出典:E257系特急わかしお)

第2宮の下踏切
【廃止後の前面展望】
新茂原方を見る 本納方を見る
(出典:列車通り「外房線」特急わかしお) (出典:E257系特急わかしお)


次章「現役時代と廃線後の三井東圧化学専用線 (新線ルート) (1)」では、新茂原貨物駅 (新茂原駅貨物施設) 起点の三井東圧化学専用線の新線ルートへの変更時の踏切信号機の設置など特徴に焦点を当てます。さらに、テールアルメ工法の路盤工事の概要など工事中の写真とともに紹介いたします。廃線後の様子についても詳しく解説いたしています。

(公開日:2024.01.21/更新日2024.04.11)

現役時代と廃線後の三井東圧化学専用線 (新線ルート) (1)
三井東圧専用線所管駅「新茂原貨物駅」(新茂原駅貨物施設) の歩み 

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