前章「地方ローカル線の機関車駐泊所 (機関支区) の作成」では、Nゲージの蒸気機関車の展示台を兼ねた小型ジオラマの制作を通じて、Nゲージのジオラマやレイアウト作成に必要なテクニックとして、ストラクチャー (建物) の墨入れやドライブラシ、パステルによるウェザリング、地面の作成などを解説し、さらに市販されているNゲージ展示用の小型ジオラマなども紹介しました。本章では、大型機関区ジオラマの作製にあたり、私が参考にした資料などを紹介します。 ■シーナリー (情景) のイメージ 現在、まだ作製途中ですが、忘備録として、プラン決定からストラクチャーの選定などをまとめてみました。
Nゲージの大型ジオラマ作成のきっかけ 所有しているNゲージの蒸気機関車を多数展示できるような大型の展示台を作りたいと思い立ったのが最初でした。最初に思いついたのは、京都府の「京都鉄道博物館」(旧称は、梅小路蒸気機関車館、旧国鉄の梅小路機関区) のような、多数の蒸気機関車が配置できる機関区ジオラマを目指して作製に入りました。
京都鉄道博物館とは 京都鉄道博物館 (旧称は梅小路蒸気機関車館) は、日本の蒸気機関車が16形式18両が動態または静態で保存されており、蒸気機関車の展示施設としては国内最大規模となっています。 また、京都鉄道博物館以外にも、旧国鉄の会津若松機関区 (現在のJR東日本郡山総合車両センター会津若松派出所)、旧国鉄の人吉機関区 (現在のJR九州人吉鉄道事業部人吉機関庫) など、現存するターンテーブルや扇形機関庫 (ラウンドハウス) がありますので、実際に現地を訪れて観察することも可能です。
■リアルティがある線路配線やストラクチャー (建物) の配置 今回作製するNゲージの蒸気機関車用の大型機関区ジオラマは、将来的には集合式レイアウトの1モジュールとして構想されています。 国鉄の鉄道管理局が作成した「線路図」や、以下の書籍に掲載されている「構内配線図」を入手したり、「JAM国際鉄道模型コンベンション」や「全日本模型ホビーショー」などで展示されている機関区のジオラマなどを参考にし、詰所など機関区内のストラクチャー (建物) の配置について、できるだけ実物に近い配置を検討しました。
世界文化社から発売されている「国鉄蒸気機関車 156機関区全図鑑」は、蒸気機関車が全盛だった1967年 (昭和42年) を中心に、全国156箇所の機関区を紹介しています。さらに詳細を調べる際には、機関区名をネットで検索する際にも役立ちます。 一番苦労したのは、機関区内部の資料でした。蒸気機関車 (SL) の写真集はたくさんありますが、機関区内の設備などを重点的に取り上げたものは非常に少なく、そんな中で見つけたのがタクト・ワンの「昭和40年代の蒸気機関車写真集 機関区と機関車」シリーズでした。 また、大正出版の「鉄道風景懐古」シリーズは、昭和20年代から40年代の駅や沿線風景など、鉄道を取り巻く情景を懐かしい写真で構成されています。消滅した設備や残存する施設なども紹介しています。 この「鉄道風景懐古 (2)」では、主に車両の保管や修理を行う施設、車庫や機関区の風景が収録されており、Nゲージのジオラマやレイアウト作りに最適です。 Nゲージで作る蒸気機関車の大型機関区レイアウト Nゲージのジオラマの小さなスペースに全ての蒸気機関車用の大型機関区の機能を網羅したストラクチャー (建物) を配置することは不可能です。そこで、「大型機関区」らしい雰囲気を演出するために、鉄道模型専門誌や展示会で発表されている写真を参考にしてイメージを広げました。
また、SHIN企画 (機芸出版社) からも、「Nゲージファインマニュアル5 SL機関区のストラクチャー」という本が発売され、蒸気機関車の機関区の様々な設備をNゲージの小型ジオラマに取り入れた作例が多数紹介されていますので、こちらもおすすめです。 機芸出版社の「シーナリィガイド」は、機関区だけでなく、駅の鉄道設備などもNゲージで再現する際のヒントなども詳細に解説されており、非常に参考になりました。
近代の電気機関車などをテーマとする場合は、「シーナリィ&ストラクチャーガイド1」や「新しい鉄道施設 懐かしの鉄道施設」(シーナリィ&ストラクチャーガイド2) が参考になると思います。 イカロス出版のNゲージ専門雑誌「季刊「N」エヌ」の特集「2002 Winter Vol.07 機関区」を参考にしました。 日本の鉄道は、蒸気機関車からディーゼル機関車を経て電気機関車の時代へと進化してきました。この特集号では、Nゲージでその変遷を再現し、機関区の歴史と魅力を詳しく解説しています。ディーゼル機関車や電気機関車の現代的な機関区ジオラマやレイアウトを作成したい方にもおすすめの一冊です。 また、今回作製する「大型機関区ジオラマ」を将来的には田口博己氏の「富樫鉄道」のように、モジュールとして分割可能なレイアウトの一部にできるようにと考えています。そのため、田口氏の「Nゲージ大レイアウト 田口博己の「富樫鉄道」」は蒸気機関車の機関区に関する事例として非常に参考になりました。
■扇形機関庫及び、転車台をメインに設置 今回作製しているNゲージの蒸気機関車を展示するための大型機関区では、「転車台」(ターンテーブル) をジオラマ (モジュール) の中央に配置し、9連の扇形機関庫 (ラウンドハウス) を設置しています。具体的な配置のイメージについては、旧国鉄の東海道本線にあった国府津機関区を参考にしました。
中規模の蒸気機関車の機関区としては、旧国鉄の総武本線にあった佐倉機関区が参考になると思います。
なお、Nゲージ用の「扇形機関庫」と「転車台 (ターンテーブル)」は、TOMIX (トミックス)やKATO (カトー) などが製品化しています。 アドバンスは、KATO (カトー) の扇形機関庫をベースにし、外観を「木造」や「レンガ」タイプに変更したり、さらに木曽福島機関区タイプ、追分機関区タイプ、梅小路機関区タイプ、奈良機関区タイプに変更する各種コンバージョンキット (ペーパーキット) を製品化しています。 これら製品の詳細な情報については、次章「蒸気機関車の大型機関区の作製手順」の「ターンテーブル (転車台) について」で、TOMIX (トミックス) とKATO (カトー) の比較などをレビューしていますので、ぜひご覧ください。
■給炭設備の配置 蒸気機関車の給炭設備として、ガントリークレーン、給炭塔、給炭台、給砂塔、大型アッシュピットなどを設置しています。イメージとして紹介した以下の写真については、イヴロ〜ニュ様より提供して頂き、AIによる着色をしています。 ガントリークレーン
給炭台 / 給砂塔 / 給炭ホッパー
Nゲージ用の給炭・給砂関連設備として、ガントリークレーン、給炭塔、給炭台、給砂塔などは、アドバンスやトミーテックなどが製品化しています。 これら製品の詳細な情報については、次章「蒸気機関車の大型機関区の作製手順」の「ストラクチャー (建物) の購入」内の「給炭・給砂施設 (ガントリークレーン / 給炭台 / 給砂塔」で紹介していますので、ぜひご覧ください。
■給水設備の配置 蒸気機関車の給水設備として、給水タンク、給水塔 (スポート)などを設置しています。
Nゲージ用の給水関連設備 (給水塔、スポートなど) は、「KATO」(カトー)、「アドバンス」、「トミーテック」などが製品化しています。 これらの製品の詳細な情報については、次章「蒸気機関車の大型機関区の作製手順」の「ストラクチャー (建物) の購入」内の「」で紹介していますので、ぜひご覧ください。
■機関区構内にある建物の配置 機関区構内には油倉庫、検修室、工作室、事務室・乗務員室、配電室、ボイラー室、用品事務室、用品倉庫、燃料係室、浴場、物置、トイレなどの建物が配置されます。
Nゲージ用の機関区内関連施設は、「KATO」(カトー)、「アドバンス」、「トミーテック」などが製品化しています。 これらの製品の詳細な情報については、次章「蒸気機関車の大型機関区の作製手順」の「ストラクチャー (建物) の購入」内の「給水塔 / 給水スポート」で紹介していますので、ぜひご覧ください。
■大型のヤード照明灯の設置 機関区構内には、照明設備としてヤード照明塔が1基設置しています。
Nゲージ用の機関区構内の関連施設は、TOMIX (トミックス)、コスミックなどが製品化しています。 これらの製品の詳細な情報については、次章「蒸気機関車の大型機関区の作製手順」の「ストラクチャー (建物) の購入」内の「大型ヤード灯」で紹介していますので、ぜひご覧ください。
■「跨線テルハ」について 以前のブログ記事「[Nゲージ・メモ] 荷役作業用施設・跨線テルハ (組み立てキット)」で述べた通り、将来的には「集合式レイアウト」のプラン図にある機関区に隣接する大型旅客駅のホーム上に荷役作業用施設「跨線テルハ」を設置したいと考えています。 跨線テルハは、昭和20年から昭和40年頃に、ホーム上に設置された荷物を載せた台車をホームからホームへ移動するためのクレーンの一種です。国鉄時代の駅の写真を見ていると、時折テルハが写っている場合があります。Nゲージ用の跨線テルハは、アドバンスが製品化しています。 アドバンス製のストラクチャー (建物) はペーパークラフトで提供されており、「Nゲージを楽しむ編」で紹介している「「Nゲージ」専用の模型用工具があると便利です」で紹介している、模型専用のアートナイフや精密ピンセット、クラフトボンドなどが役立ちます。これらを使用すれば、きれいに組み立てることができると思います。 今回ご紹介した「アドバンス」は、国鉄時代を再現するNゲージのストラクチャーを多く発売している注目のメーカーです。
次章「蒸気機関車の大型機関区の作製手順 (1)」では、Nゲージ用の蒸気機関車の大型機関区ジオラマのメインとなる転車台 (ターンテーブル) について、TOMIX (トミックス) やKATO (カトー) のターンテーブルの比較や、それに対応する扇形機関庫などを紹介しています。 |